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日本の薬を良くしたい

 

この部屋は、私たちのホームページのオープニング・タイトルとなっている、「日本の薬を良くしたい」という思いで作りました。日本では医薬分業が不徹底なため、医師が薬の差益を当てにして処方をするという、世界の先進国では考えられない状態が長い間続いてきました。そうしたことの結果として、国民一人当たりの薬品の使用額も他の先進国に比べて多く、医薬品の副作用による被害も、ソリブジン事件や血液製剤のHIV汚染という、信じられないような事態を引き起こしてきました。厚生労働省では、さかんに「医薬品使用の適正化」に向けての検討を行なってきました。そうした議論はとても大切です。ぜひ左の報告書をお読み下さい。

 

報告書の内容は、かなり重複した部分があります。大切な部分は何度も強調することが必要だったかもしれません。しかし、これらを読んだ私たちは、「何かが足りないなぁ」という感想を持ったのです。それをずっと考えてきて、次の三つのことを掘り下げて、考えなければならないということに気づきました。

1。適正な医薬品使用の基本は処方である。

 

患者への情報提供がいかにうまく行われても、また薬剤師の薬歴管理やダブルチェックが十分機能したとしても、今の日本の薬剤の研究開発・承認許可・製造・流通のあり方では、医師の適正な処方を妨げる要素が余りにも多すぎる。

 
   これは日本に限ったことではありませんが、ある薬が売れるということが分かりますと、同じ様な効能・効果を持った薬が多くの製薬会社から発売されます。効き目に差があまりなければ、それを使う医師は自分の好きな薬を使えばいいわけです。その時の選択基準はどういうことになるでしょうか?一番最初に頭に浮かぶのはどれが患者の現在の病状にとって最適であるかということです。そうあらねばなりません。ところが、もし使う薬によって医師のもうけに差がでるとするとどういうことになるでしょうか?医師も神ではありませんので、ついつい利益の多い薬を選んでしまう可能性があります。ですから、厚生労働省は熱心に医薬分業を広めようとしているのです。医師のように、人の健康や生命を守るという崇高な使命を持った職業の人に商人のように、あの薬を使うといくら、こっちならいくらなんて、小学生にでもできる算数で、貴重な時間を取らせていては申訳ないし、国の財産の損出にもなります。「医薬分業」が必要な第一の理由は、医師が直接患者に薬を売ってはいけないということです。

    日本で良く使われている薬の中には、外国ではとても薬として許可されないものが数多く含まれています。このことは一見、薬の承認や許可とは余り関係ないように思われますが、実は大きなかかわりがあるのです。申請をするメーカーとしては、医師との関係さえ良好にしておけば、あとは薬価差やもろもろのサービスによっては、自社の製品を重点的に処方してくれる医師を作ることができるからです。大学病院や大病院へのそうした販売促進は、メーカーのMRがするわけですが、学会のボスや医局の渉外係りさんへのサービスの濃淡によって患者さんの薬が決められるなんてことはあってはならないことです。

   

    日本の医薬品卸業界のあり方も、薬の適正使用の大きな障害になっています。現在日本には約200の医薬品卸があるといわれていますが、日本の医薬品卸の数は欧米の数倍にもなっています。しかも、問題は卸の取り扱いメーカーの数やマージンの形態にあります。先進諸国の医薬品卸の取り扱い薬品は、全てのメーカーの品目になっていますが、日本の卸の場合には、特定のメーカーの系列下に入っていて、卸が重点的に販売促進するメーカーと、取り扱いさえしないメーカーもあります。卸が力を入れているメーカーの品物を沢山販売すればマージンも多くなりますので、競争品が色々ある場合にもなんとかして、得意なメーカーの薬を納入しようということになります。これはあまり言われていませんが医薬品の適正使用の大きなネックになっていました。ただ最近では卸の合併が進み、保険薬価の建値制や医薬分業の進展などのおかげもあって徐々に改善されつつあります。

メーカーで長い間営業畑を勤め、定年退職した私の友人が、「日本の病院で使われている薬は、メーカーのMRのサービスできまり、診療所で使われる薬を左右しているのは医薬品卸のMSである」といったことがあります。卸のセールスさんにそのことを話すと、全く同感といいます。

医薬品卸の使命は、必要な薬をきちんと供給することですから、フルラインの品揃えにして、公定マージンにしないといけません。

 

  製薬団体連合会の説明では、償還価格制度になれば薬価差が無くなるようないい方がされたことがありましたが、それは間違いです。物が流通すればそれに係わる人に利益が生じないということはありえません。どんな値段の決め方をしてもかならず、それを取り扱う人に利益が入ることになります。そして、その利益を大きくすることによって自社の製品のシェアーを拡大しようとするのがメーカーの販売戦略になります。ですから、いま大切なことは薬価の決め方や償還の仕方の検討ではなくて、医師が薬から完全に手を引くにはどうしたらいいかを早急に検討することです。内服薬や外用薬だけでなく注射についても医薬分業に

なっている国がありますが、それが本来の医薬分業の精神に合った、流通の姿です。

   

    医薬品適正使用でもっとも基本的なことは、医師の処方です(「ドクターズ  ルール 425」参照)。

2。不適正な医薬分業がまかり通っている。

 

  医院の横に突然できた薬局。いかにも医院と懇意なのはいいけれど、なんとなくできできムード。患者さんにも薬局を選ぶ権利はあるのです。自分の信頼できる薬局があるなら、なにも医師に遠慮してお隣で調剤してもらう必要はない。行きつけの薬局でドリンクでも買いながら今飲んでる薬を見せて、処方せんを持参してもいいか尋ねてみるのも、賢い患者さんになるための第一歩かも知れない。

 

    「医薬分業になったら日本の薬は良くなる」というのが、私を医薬分業運動に駆りたてた大きな要因でした。医薬分業が進んで、病人の約半分の人が処方せんを手にするようになった現在でも、塩化リゾチームやユビデカレノン、あるいはクレスチンやグルタチオンというような薬が大手を振って通用していた10数年前と同じ様にいい加減な薬がかなり広く使われてい

ます。

    その理由として考えられる一番大きな理由は、医師主導型の医薬分業が蔓延しているからです。形の上では、向かいや隣に新しい薬局が出現しても、看護婦さんが誘導するその薬局やこの前まで病院にいた薬剤師が勤めるようになったお向かい薬局はいかにも、その医院の息がかかっているという雰囲気。中には、あんな見え見えのもたれ合い分業なんかいやだと行って、自分のかかりつけ薬局で調剤してもらう勇敢な人も無いことはありませんが、うさんくさいなぁと思っても命を預けている医師に悪いからと、お向かい・門前薬局で調剤してもらう人が大半です。

    しかし、患者さんがそうした意識でいる間は日本の医薬分業は、もたれ合い分業の域を脱出できず、日本の薬は相変わらず良くなりません。

 

    それと、日本の薬局の処方せん調剤における技術料が外国に較べて極端に高いことも、日本の医薬分業の正常化の邪魔をしています。ドイツやフランスは薬局で調剤してもらったときに薬剤師への技術料はなく、完全に薬のマージンですから比較できませんが、イギリスの場合処方せん一枚あたり薬局の受け取る技術料は月間1500枚までの分については、約300円であり、それ以上の部分についての技術料は半分になっています。アメリカは薬をカバーしているメディケイドの場合、州ごとに決められていますが平均5ドルくらいです。日本の場合は、社会医療調査報告(平成13年6月)によると、薬局調剤の技術料比率は32.4%です。時期は少しずれますが、平成14年の処方せん一枚当たりの金額は5,846円ですので、一枚当たりの技術料は薬1,900円にもなります。おおざっぱにいって、イギリスの5倍、アメリカの3倍にもなっています。それだけ日本の薬剤師が優秀であるといってしまえば格好いいですけれど、どうもそれだけではありません。

 

    医師は分業するなら隣に薬局が無いと駄目だといいます。さきほどもたれ合い分業いう言葉を使いましたが、処方せんを書く人とそれを手にしないと仕事にならない薬局という関係が存在することを見逃してはいけません。はっきり言ってしまえば、過剰な技術料は医院へのリベートの原資になりえます。(リベートの出し方には100種類もありますよと教えてくれた卸の幹部もあります)

   

    そこで、なぜ薬局の技術料がそんなに高くなるのかを説明しましよう。薬局の技術料は大きく分けて3種類のものを合算します。一つは『調剤基本料』です。2 番目の技術料は『調剤料』です。それに「薬歴服用歴管理・指導料」や「薬剤情報提供料」などの『指導管理料』です。

 

  『調剤基本料』はいわば保険薬局を運営していく上での基本的な報酬です。これを処方箋枚数の多寡や、主として受け取る医院の枚数が全体に占める比率によって 4段階に分けています。

  問題は『調剤料』が、に日数剤数倍数制と呼ばれる薬の服用時点の違いや、投薬日数によって技術料が付加されることです。剤数というのは、服用時点が違ったり服用回数が違っていたりするとカウントされます。

 

    説明を簡略にするために14日分の薬が投薬されるとします。一日3回食後のものですと、それに対する調剤料は63点(630円)です。

  調剤薬局に儲けさせて上げようと思えば、それに一日2回服用の薬を付け足したり、一日3回食前服用の薬を付加すればいいのです。更に、服用時点の違う睡眠薬か便秘薬を寝る前に服用として処方すれば4剤になるのですが、過去にそうした恣意的な剤数増やしが横行したため現在では3剤までしかカウント出来ないことになっていますので、3剤×63点で1830円が加算されることになります。

   

    もし、医院とお隣の薬局が密接な関係にあれば、なかなか薬の剤数が減らないことがこれでお分かりでしょう。そうした不合理で非科学的な点数構成を改めない限り、患者さんの飲む薬の数は減りません。ですから、私達はこの日数剤数倍数制という危険な点数構成を廃止すべきだと考えています。

 

出来高払いが建前の日本の医療の欠点は、『指導管理料』にも現れています。十分な指導もしないで、点数の高い「特別指導料」を取っている保険薬局があって保険監査の対象になります。

「薬歴服用歴管理・指導料」や「薬剤情報提供料」(薬歴手帳を含む)は、薬剤師法の25条の2に照らし合わせれば、当然実施すべきことですので、これも『調剤基本料』に含めてしまえばいいのです。

 

『調剤料』を廃止して、『調剤基本料』と『指導管理料』を一本化する。そうすれば当然のように調剤料のまるめになります。一枚の処方せんを調剤した時には、いかに複雑な調剤であっても一定金額の技術料になります。

 

それでは、一般の保険薬局と厚生労働省が好ましくないといっている、門前薬局やマンツーマン薬局の差別化はどうするかという問題が残りますが、その解決にはイギリスのNHSにいいお手本があります。

 

イギリスでは1500枚を一つの区切りにしていますが、日本の場合は現在のひずみを早急に是正する必要があります。月間300枚までの部分については、現在の平均的な技術料である1800ー2000円くらいにしてもいいですが、それをオーバーした部分については漸減させるということにすればとかく目障りな不適正な分業が自然に消滅していくだろうと期待でき

ます。そうなってはじめて理想的な「かかりつけ薬局」が定着します。

 

  また、受け入れ枚数によって技術料は異なりますので、患者さんの負担に混乱が生じないようにするため、患者さんの自己負担は薬剤料の15%とか30%とかいうように、保険薬価にある指数をかけることにします。患者さんが自分の薬は高いのか安いのかがわかり易いですし、高い場合にはどうしたら安く出来るかを考えてもらういい機会にもなります。(先発品・

後発品の選択を含めて)

3。薬物治療の主役は、患者さんである。

 

ひと昔前にくらべれば、患者さんへの情報量は飛躍的に増大した。しかし、患者が本当に欲しい情報が渡っているとはいいがたい。薬を飲むのは患者。もし、副作用が起きたらつらい思いをするのはだれか?薬についての情報は納得いくまで、徹底的に聞かなければいけない。いい加減な返答で逃げる医師や薬剤師がいたら、その人は本当に患者のことを思っているとは考えにくい。セカンド・オピニオンを求める準備をした方がよさそう。

 

賢い患者さんになるための知恵

実際に薬を自分の体の中に取り入れるのは患者さんです。ですから、自分の薬についてしっかり調べることが、賢い患者になる第一歩です。



10年程まえの日本では、薬は医師からもらうもの、したがって薬についていろいろ医師に尋ねることは、医師の権威とか尊厳に対する重大な侵害ではないかと心配する患者さんがほとんどでした。たまたまアメリカで1983年に始められた「ゲット・ジ・アンサーズ」運動のことをアメリカ薬剤師会雑誌の1984年4月号で読み、いずれは日本でもそういう運動が展開されることを予感しました。その当時の日本の医療界はとてもそんな雰囲気ではありませんでしたが、丁度患者さん用の薬の解説書の原稿を書いていた時でしたので、大変心強く感じたことを記憶しています。私が、「医者からもらった薬がわかる本」の初版を出したのは、1985年の11月でしたが、その当時の医薬分業率はとても低く、ほとんどの患者は医師から直接薬をもらっていました。「医薬分業」になっていないと、医師は薬の差益を手に入れることができるため、患者さんにとって本当に必要な薬が、医療機関の経営にあまり貢献しないために処方されなかったり、必要のない薬が儲かるからという理由で大量に処方されたりする可能性があります。医師が神であれば、そんな心配をする必要もありませんが、医師といえども人間であり、慾もあれば見栄もあります。だから、欧米先進国ではほとんどの国で「医薬分業」なっていて、そうした経済的理由によって患者本位であるべき処方が、悪い影響を受けないシステムになっているのです。それでは「医薬分業」になると問題は解決するかというと、残念ながら今の日本の医薬分業は、変則的でだめです。それは医師主導で医薬分業が進んでいるからです。具体的にいえば、薬による儲けが少なくなったと感じた医師が、自分のいうことを聞いてくれる薬剤師を隣や向かえに呼んできて、独占的にその薬局へ処方せんを流すという形の医薬分業が蔓延しているからです。私は、これを「もたれ合い分業」と呼んでいます。もちろん、そうでない医薬分業の本当の精神に則ったすばらしい医薬分業をなさっておられる医師もありますが、それは残念ながら少数派です。私が知っている例では、石川県のよしだ小児科クリニックがそのお手本です。ホーム・ページも作っておられますのでぜひ行って見てきてください。日本の医師が、吉田 均先生みたいな考え方で薬を処方されれば、少なくとも薬についてはすばらしい医療になると思います。もし、他にもそういう医師をご存じであれば、メールでぜひ教えて下さい。そういう尊敬できる医師の情報を多くの患者さんに知らせることが、日本の医療の改革につながると信じています。

 

あなたの薬を調べよう

薬剤師法が改正されて、保険薬局で受け取る時にいろいろな情報が手渡されます。薬の名前や効き目、飲み方や副作用、さらには他の薬との飲みあわせまで、実に内容豊富です。当然なのです。そういう情報を紙に書いて患者さんに渡せば、医師や薬剤師は100円の技術料を請求できるからです。ですから、不安だったら徹底的に聞く権利は患者さんにあります。ちょっと、おもしろい事を教えましょう。薬の名前や副作用に注意を払うのは当然ですが、その薬を発売しているメーカーに注目して下さい。ゾロ薬品という言葉をご存じの方も多いことと思います。ちょっと売れる薬があると、その薬に似た薬を出したり(大メーカーがよく使う手です。「ゾロ新」と業界では呼んでいます)、パテントが切れるのを待って名前も聞いたことのない中小メーカーがわっと群がる正真正銘のゾロの2種類があります。一般的には後者のゾロをさすことが多いのですが、実は前者の罪も相当なものです。同じ様な効果のものを後追いで出すわけですから、医師や薬局にサービスでもしなければ売れないはずです。日本にはどことは言いませんが、そういうことの得意なメーカーがあります。医薬分業していなければ、そのサービスは医師の懐に入ります。ですから分業していなくてゾロ新を使う医師は、そうすることによって医業経営を考えるわけですから、あんまり尊敬できないわけです。一方、医薬分業していながらゾロ新を使う医師も、だめです。実際に買うのは調剤薬局ですから、利さやは薬局にはいるのですが、その辺りが私が「もたれ合い」分業と呼ぶ由縁です。リーベートをもらっているかもしれません。そうでなくとも薬局の経営を考えてあげていることだけは確実です。患者さんの利益より、パートナー薬局の経営を優先する医師を尊敬しますか? 残念ながら日本の医薬分業の大部分は、こうした「もたれ合い分業」が占めています。一番大切なことは、薬の専門家である薬剤師と薬剤師会がしっかりすることですが、今までの医薬分業の進め方の中で、今それを彼らに求めることはとても難しくなっています。 しかし、絶望ではありません。思い起こして下さい。薬を実際に服用するのは患者さんです。その患者さんがきちんとした行動をとれば、まだまだ日本の薬は良くなります。

 

  1。自分に処方された薬を良く調べ、それが患者本位の意図で処方されたか、医療機関やパートナー薬局の経営上のことを考えて処方されたかを、よく考えて下さい。自分で判断できないときは親しい薬剤師にたずねるのもいい手です。


  2。たとえ向かいやお隣に薬局があっても、薬局選択の自由は患者さんにあるのです。自分のいきつけの薬局や親しい薬剤師の経営している薬局でいろいろ相談しながら薬を服用すべきです。看護婦さんが薬局を指定するのは違反ですから、指定された薬局以外で調剤してもらうという手もあります。法律に違反してまで誘導するのは、患者さん本位ではありません。 


  3。自分に処方された薬の意図に疑問を感じた時は、徹底的に聞いて下さい。最初は薬剤師に聞けばいいでしょう。納得できる説明が得られないときには医師に聞くことをためらってはいけません。例えば、あなたがお金持ちで、ゾロ薬品なんか飲みたくないのにゾロが処方されたら、銘柄品を処方してもらうよう頼んでみて下さい。私はアメリカの薬局でゾロはいやだと言い張っていたご婦人を目撃しました。

revised : August 12, 2003